宇宙業界でもデータを単に集めるだけではなく、それをどう産業に活かして利益に結びつけるかを考える

データ横丁

データ横丁

2024年8月22日 23:14

今日(2024/8/22)午後から、マイナビ主催「2024 Summer for データ活用」に参加してきた。目的は2つの講演を聞くことで、その一つがスペースデータ社長の佐藤航陽さんの特別講演「地球と宇宙のデジタルツイン化、発想と実現のプロセス」。佐藤さんのXやYouTube番組はほぼフォローしていて、言語化の妙や発想の天才ぶりに魅せられてた。生・佐藤さんにお会いできるとなって、ちょっとウキウキした。会場はかなり混みあうだろうと思い20分前から会場入りした。さすがに一番前は恥ずかしいし、質問マイク向けられたら赤面するとおもって(そんなことあるわけない(笑)、前から3番目を陣取った。 

TECH+EXPO 2024 Summer for データ活用 オフライン展示会https://news.mynavi.jp/techplus/lp/2024/enterprise/dataexpo2024summer


短絡的なアイディアに対する警告

宇宙産業においては、「ものを作る」(宇宙機器や衛星を製造する)という活動が目的になっている。それだけでは、短期的には収益が上がるかもしれないが、そこから得られるデータや技術を有効に活用しなければ、ビジネスの発展が停滞するだろうと、佐藤さん。

一方で、短絡的なアイディアの危険性を警告していました。彼が指摘したのは、特に宇宙産業において「データを集めればすぐにビジネスになる」というような、安易な?発想が多いということです。しかし、宇宙から得られるデータをただ集めるだけでは、それを地上で実際の価値に変えることができない限り、ビジネスとしては成立しないと。

佐藤さんは、IT業界での経験からも、こうした短絡的なアイディアがいかに失敗しやすいかを何度も目の当たりにしてきたそうです。宇宙業界でも、データを単に集めるだけではなく、それをどう産業に活かして利益に結びつけるかを考えることが不可欠だと強調してました。データをどう使い、どのようにしてビジネス価値を生み出すかという視点が重要だと。

ちなみに、佐藤さんが宇宙産業に進む中で、様々な専門家の意見を聞いてこらたそうですが、それを重視して頼っていたら、新しい挑戦が進まなかっただろうと言っていました。 自らの直感や新しいアイデアを信じて行動することの重要性を強調しました。専門家から「不可能だ」と言われることがあっても、自分の考えを貫く勇気が求められると。ふむふむ(わかる気がする)。 柔軟かつ大胆に行動する姿勢が、イノベーションを生み出す鍵であると述べていました。

異分野の知識が融合することの価値

次に、佐藤さんが語っていたのが、異なる分野の知識と経験が融合することで新しい価値が生まれるという話です。彼のチームには、宇宙ステーションの設計に20年以上携わったJAXAのメンバーや、LINEの立ち上げに関わったメンバーがおられる。異なる分野の専門家が集まることで、宇宙と地球、そしてデジタルを融合させた全く新しいビジネスモデルが生まれているという話でした。

仮想空間での挑戦とその可能性

佐藤さんが取り組んでいる仮想空間のプロジェクトにも非常に驚かされました。宇宙からのデータやAI、CG技術を駆使して、現実そっくりの地球を仮想空間に再現するというこのプロジェクトは、まるで映画のような話です。彼は、この技術を使って都市開発や防災、さらにはエンターテインメントの分野でも新しい可能性を切り開こうとしています。

例えば「Fortnite」や「Roblox」などのプラットフォーム上で、クリエイターが自分のコンテンツやゲームを作成し、それを販売することで収益を得る仕組みを整えています。この仕組みにより、クリエイターたちは自身のアイデアを形にし、それを仮想空間でユーザーに提供することで、直接的に収入を得ることができます。佐藤さんは、こうした新しい収益モデルを通じて、エンターテインメント業界におけるクリエイターの活躍の場を広げようとしているそうです。

佐藤さんは、宇宙技術が広く普及するためには、単なる技術開発にとどまらず、具体的な事例を多く作り出すことが重要だと強調。宇宙産業をさまざまな他の産業と結びつけることで、新しい価値を創出しようとしています。

宇宙技術と食料生産、電力供給、エンターテインメントなどの分野を掛け合わせる取り組みです。例えば、宇宙技術を使って効率的な食料生産システムを開発したり、宇宙から得られるエネルギーを地上で活用するモデルを作ることなど。

こうした多様な事例を生み出すことで、宇宙技術がより多くの産業に浸透し、新たなビジネスモデルが次々と生まれることを佐藤さんは期待しているのです。彼は、この取り組みを通じて、宇宙技術が日常的なインフラとして広く認知される未来を目指しています。

近い将来、私たちの生活も大きく変わるのではないか、大きな夢を感じました。すごい。

フルリモートでの開発と新しい働き方

佐藤さんが取り組んでいるプロジェクトの進行方法も興味深いものでした。彼はSNSを通じて興味を持つ人々を集め、フルリモートで開発を進めています。Slackを使って、顔を合わせることなくプロジェクトを進めるというこのスタイルです。

特に印象的だったのは、メンバーが一度も対面せずにプロジェクトを成功させている点です。フルリモートでプロジェクトを進めた結果、逆にドキュメント管理がしっかりできたと。リモート環境では、メンバー同士が物理的に会う機会がないため、コミュニケーションやプロジェクトの進捗管理をドキュメントに依存することになります。そのため、自然と情報の整理や共有が徹底され、ドキュメントが常に最新で、誰でもアクセスしやすい状態が保たれるようになった、というのです(引継ぎも楽)

リモートでの作業がむしろプロジェクト管理を効率的だったと。ドキュメント管理の点でも、これからの時代、場所にとらわれない働き方がますます広がっていくのだと思います。

プラットフォーム構築の挑戦

佐藤さんが語ったもう一つのテーマは、プラットフォームの構築です。彼は、宇宙データを活用するためのプラットフォームを作り上げようとしており、そのために自ら投資を行い、事例を作りながら進めていると話していました。

この話から、私は何か新しいものを作り上げるには、初期段階での投資とリスクが不可欠であることを感じました。プラットフォームを成功させるためには、まず実際に動く事例を作り出し、それを基にユーザーを引き寄せる必要があるのだと理解しました。

宇宙産業とIT産業の融合

宇宙産業とIT産業は全く異なる分野であるとされています。佐藤さんはそれらを結びつけ、新しい価値を創造しようとしています。

佐藤さんによれば、宇宙業界のエンジニアが使うソフトウェアやプログラミング言語は、ITエンジニアが一般的に使われているものとは大きく異なるそうです。宇宙開発には、特有の条件に対応するため、特殊な技術が求められる。たとえば、宇宙環境では通信の遅延や電力制約があるため、それに合わせたソフトウェア設計が必要。

この違いのため、たとえば、ロボット工学やゲーム開発で使用される技術をそのまま宇宙開発に応用することは難しい(=同分野のエンジニアがそのまま宇宙業界のエンジニアになるのは難しい)とされているそうです。

これを解決するために、佐藤さんは、地上で広く使われているゲームエンジンやロボット用のオペレーションシステムに、宇宙開発の技術を組み合わせて、専門家でなくてもスムーズに宇宙開発に取り組めるようなツールやプラットフォームを構築することを目指しているそう。

IT産業の人達も、宇宙開発に参加できるようになり、新しいアイデアや技術が宇宙産業にどんどん取り入れられると期待されています。

宇宙産業の未来とそのインフラ化

佐藤さんが語った宇宙産業の未来についても印象的でした。彼は、宇宙産業が今後20年から30年の間に日常のインフラになると予測しています。インターネットがそうであったように、宇宙も私たちの日常生活に深く根付く日が来るというのです。

宇宙版のマイクロソフトを目指す

佐藤さんが掲げるビジョンの一つに「宇宙版のマイクロソフトを目指す」というものがあります。宇宙産業の基盤となるOSやプラットフォームを構築し、それを世界中の人々が使えるようにすることを目標だと。これが実現すれば、宇宙開発が特定の専門家だけでなく、一般の企業や個人にも開かれたものになる。規模感がすごい。

最後に3つポイント

佐藤さんは、講演の最後に、次のポイントをまとめてくれました。

まず、異なる業界の知識や技術を融合させることの重要性。宇宙とITという異なる分野を結びつけることで、新しい価値を生み出せる。これまでにない発想や解決策は、異分野の知識を掛け合わせることで初めて生まれるという考えが大事であること。

次に、柔軟性を持ってプロジェクトを進めることの大切さ。計画通りにいかないことがあっても、その都度方向性を変えることで、新しい可能性が開けるという話は、どんな分野でも共通する教訓だと感じました。

そして最後に、佐藤さんは宇宙が日常の一部となる未来を見据えて行動することが重要だと話していました。彼は、宇宙がインターネットのように当たり前の存在になる日が来ると。

非常に大きな構想とその実現性を感じて元気をもらいました。自分なりのフィールドで頑張ろうと前向きになれた講演会でした。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次